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  • 執筆者の写真Sari Kaede

アクティビティデザインの論点四選(2019年5月版)

アクティビティデザインの論点四選(2019年5月版)

こんにちは、サリー楓です。

みなさん、土曜日をいかがお過ごしでしょうか?

私は油絵を描いてインドアな週末を過ごしています。油絵を乾燥させている間にこういう記事を書いてみました。長いですが最後までお付き合いください!


さて、前回の記事「アクティビティデザインってなに?」ではアクティビティデザインというものについて説明しました。今回は最近身の回りで起こっているニュースを取っかかりにアクティビティデザインの論点について考えてみました。もちろんアクティビティデザインに限らず建築や都市にも関係する話題だと思うので、いろいろな視点で読んでもらえたらと思います!


【アクティビティデザインの論点1:公開空地の利用動向調査】


今年の3月、公開空地の利用制約が緩和され、新たにシェアサイクルを設けることが認められました。大々的に発表されなかったのであまり話題にならなかったですが、大きな変化だと思います。


[fig.1]3月28日に改定された「新しい都市づくりのための都市開発諸制度」


[fig.2]これまで商用利用が禁止されていた公開空地に対する、利用制約の緩和


→起こっているシナリオ

1.シェアサイクルを設けることで定期的な利用料など直接的な利益を得るという状況は今でも起こっています。従来からある、敷地内に公衆電話や自販機を設置するのと変わらないビジネスモデルですね。


→起こりうるシナリオ

2.シェアサイクルという小規模ながらも交通ハブを設けることでビルの資産価値や利用率を高める間接的な利益が発生するかもしれません。例えるならば、ビルが駅と直結するのと似ている利益の発生方法です。


3.交通網としてのシェアサイクルの特徴は、各ハブが小規模ながらも都市に大量に分散できることです。不動産シリーズに対するシェアサイクル導入によって、これまで各建物個別に価値追求を行っていた不動産をネットワークとしてデザインし直すことができるかもしれません。


[fig.3]ドコモによるコミュニティサイクル(引用:NTT DoCoMo)


[fig.4]現行のサイクルポート-都内では既にインフラ化している(引用:モバログ)


→理想的なシナリオ

4.上記の2,3のシナリオが起こる可能性をデータで証明できれば、実際に2,3のシナリオが起こるよりも先にシェアサイクル事業者(ドコモなど)がサイクルポートを新設する際の用地取得費用をゼロにできるかもしれません。ということは、実際は2,3の実現を待たずに4のシナリオまで進むこともありえます。



【アクティビティデザインの論点2:スーパーマーケットの生存戦略】


→起こっているシナリオ

1.Amazonや楽天などのEC巨人の影響で実店舗で買い物をするインセンティブが低減してきています。最近家電を量販店で購入する機会が減っていませんか?これは日常生活でも実感すると思います。


2.さらに、EC巨人によるオフラインへのチャンネルシフトが試みられています。チャンネルシフトというのは販売チャンネル(顧客が商品を購入する窓口)が店舗のようなオフラインからECサイトのようなオンラインに移動したりすることです。みんなが果物をスーパーではなくECサイトで買うようになれば、それはチャンネルシフトです。その逆の動きもあります。(Amazonがレジ不要のコンビニエンスストアを実験するなど)


[fig.5]Amazonのオフラインチャンネルへの進出(引用:CNET news)


→起こりうるシナリオ

2.実店舗で買い物をするアクティビティを丁寧に分解することで、今後EC巨人たちがチャンネルシフトしてもSM&GMSが生き残る方法が見つかるかもしれません。


→理想的なシナリオ

3. SM・GMS(スーパー、ショッピングモールなど)は上記のようなEC巨人と戦わずして勝つシナリオを模索するのが賢明だと思います。実際にそういうふうに動いてるのではないでしょうか。個人的には、書店・図書館とスーパーマーケットの空間構成の類似性に学ぶのがいいと思います。書店や図書館は「電子書籍vs紙書籍」という対立を避けるように何度もイノベーションを起こしてきました。蔦屋書店のようないわゆる「探索図書」、「メディアテーク」と呼ばれる新しいビルディングタイプの登場など、書店・図書館と同じような変革が可能になるかもしれません。



[fig.6]入場料のある書店としてデビューした文喫。(筆者撮影)


電子書籍の登場以降、蔦屋書店を皮切りに書店や図書館に対するチャンネルミックスが加速しているが同じような変革がSMにも訪れる可能性があります。



[fig.7]書店・図書館の空間構成は似ているかもしれない(筆者作成)


上から順に「バックヤード:店内空間」、「検索されるためにカテゴライズされた棚レイアウト」、「出入口を制限するセキュリティ計画」、「セキュリティ付近に設けられるレジカウンター(貸出窓口)」


[fig.8]空間構成の類似性に着目した設計(筆者が四年生のときの設計課題提出物)


実際にはこのような設計物では示されない変化が提案できるのではないかと思いますが、いちおう載せておきますね!



【アクティビティデザインの論点3:イートインスペースのアクティビティデザイン】


今回の消費税増税では初の軽減税率が採用されました。生活必需品には少なく課税し、嗜好品には多く課税するというものです。食事は生活必需品でありながら、味を楽しむ嗜好品でもあります。そこで、飲食料品には低く課税することが決まりましたが、スーパーやコンビニの弁当を店内のイートインスペースで食べた場合は軽減税率対象外です。一方で、弁当などのテイクアウト商品は対象内です。



[fig.9]軽減税率対象(引用:Class L)


→起こっているシナリオ

1.イートインに対する注目が高まる一方で、肝心の空間は従来のイートインスペースからさほど進歩していません。


2.軽減税率対象外となったことでイートインスペースの環境整備に対する投資が増加する可能性は低くなりました。個人的にはイートインスペースの設計の方が興味のある話題でした。


[fig.10]イートインスペース(引用:Family Mart)


3.軽減税率対象となったことで、テイクアウト商品の導入を検討するレストランが増えています。SMでもテイクアウト商品をイートインスペースで食べない人が増加する見通しが立ちます。


→起こりうるシナリオ

4.イートインスペース、オフィス、公園等で弁当を食べる人を対象にアクティビティを分解することで、本来レストランやイートインスペースが提供するはずだった体験に代わるものが生まれるかもしれません。


5.フードトラックのシェアが拡大しています。このまま競争原理が働くと、公開空地や公園などを対象により効果的な販売場所の模索が始まると思います。


[fig.11]フードトラック出店場所(TLUNCH)の増加推移(引用:IT media)、85拠点に対し300以上のフードトラックが出店している。


→理想的なシナリオ

6.テイクアウト商品と他空間の相乗効果(オフィスのラウンジ、施設内託児所、公開空地等々)などによって各施設内にこれまでとは違う公共性が生まれるかもしれません。


7.上記の理由で、オフィスのモチベーション改革と深く関連する可能性もあります。



【アクティビティデザインの論点4:社員だけでなく企業も嬉しい働き方改革】


昨今話題の働き方改革は「労働時間改革」や「業務報酬改革」として理解されがちだが、最も大切なのは「モチベーション」の改革だと思います。


柔軟な働き方-生産性への影響(引用/経済産業研究所)


→起こっているシナリオ

1.労働時間、業務報酬とモチベーションの相関性を証明する。

「労働時間が短い+業務報酬が高い→モチベーション」

という証明は既にあります。


→起こりうるシナリオ

2.逆方向の

「モチベーションが高い→(成果を犠牲にせずに)労働時間が短い+業務報酬が高い」

を証明する試みが行われています。様々な論拠によって証明されていますが、決定的なデータは存在しません。


→起こりうるシナリオ

3.モチベーションを高めることが経営の資産として認められれば、現在にも増して経営者によるワークプレイスに対する投資が加速するでしょう。


日建設計竹橋オフィス(引用:nikken.co.jp)


ワークプレイスの分解(引用:WORK MILL)


→理想的なシナリオ

4.ワークプレイスを通したイノベーション支援がひとつのビジネスモデルとして成立するかもしれません。これは、内装設計に対する一度限りの設計料ではなく、コンサル料としてサブスクリプション型の設計料が発生することを意味します。(最新のワークプレイス設計では常に環境を変化させるようなものもあるので、このようなマネタイズの変化は一部で既に起こっていますが)


以上、アクティビティデザインを考える上で有用そうな四つの論点を示しました。

興味のある方は一緒に研究しましょう! 以上

※本記事の内容は筆者の個人的な意見であり、筆者の所属組織の業務内容・見解とは無関係であることを明記します。

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