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  • Sari Kaede

シリーズ空間戦略01:まえがき

シリーズ空間戦略01.まえがき


01-1.まえがきのまえがき


 こんにちは、畑島楓です!


 タイトルの通り、これから何回かに分けて空間戦略について書いていきたいと思います。このシリーズの読者は建築学科や都市デザイン学科などある程度基本的な建築の知識のある学生の方、または建築の基礎知識はないけれどデザインストラテジーやデザインマネジメントを勉強されている方を前提としています。おそらく、ほとんどの大学の建築学科では教わらない内容(というか、建築の領域では最近まで馴染みのなかった概念なので教えられる先生が少ない内容)なので、シリーズを通して最後まで読む価値は十分あるのではないかと思います。


 もちろん、すでに実務を経験されている建築家の方やデザインストラテジーなどを普段の業務で使っているデザインコンサルティングやクリエイティブディレクターの方も大歓迎です。これまで分散していたいろいろな研究成果や意見を四苦八苦してまとめたので、馴染みのある方が見ても楽しい内容になっていると思います。シリーズといっても考えながら少しずつ書いていくわけではなく、半年前に書いた文章を読みやすいように手直ししながら5回ぐらいに分けて公開していく感じです。分かりにくいところや補足がほしいところがあれば、遠慮なくコメント欄にご意見ください!



01-1.まえがきのまえがき


自己紹介を見ていただくと分かると思うのですが、私は慶應義塾大学で空間戦略について研究しています。現在論文を進めているところなのですが、イギリスやアメリカ、北欧などを中心に現代まで培われてきた空間戦略がどのように現場で使われているのかを戦略家の方々の仕事場に伺いながら研究しています。それと、これまでまとまった歴史が示されていなかった1880年代以降の空間戦略の歴史についても調べています。両方とも面白い内容なので並行して研究を進めているのですが、修士論文は一本しか出せないそうなのでどちらか気に入った方を提出しようかなと思っています。こう書くと、私って欲張りですね。笑



01-2.空間戦略って何やねん!?


 空間戦略について研究している私ですが、よく「空間戦略って何やねん!?」という質問をいただきます。"空間戦略"という日本語表記は論文を進めやすくするために行った私の意訳ですが、英語ではArchitectural Strategyと書きます。この英訳が"建築戦略"とするか"空間戦略"とするか、すごく迷ったところなのですが、歴史的な経緯や既にある海外の研究の様子を考慮して"空間戦略"に統一して呼ぶことにしました。


 それで、先に空間戦略の定義について辞書的に書いておきたいと思います。

(ちなみに、この定義はブログを書くにあたって誤解が起きない程度に簡潔に書きなおした定義であって、論文の方ではより厳密に定義しています)


【空間戦略】(Architectural Strategy)

 1. Design Managementを構成する概念としてのDesign Strategyが空間を対象とする場合の戦略的なデザインプロセスこと。デザインの管理・戦略が都市を含まない建築物の設計、建築物の内装計画、既存の空間の利用計画に用いられる場合における、その管理・戦略されたデザインプロセス全体が対象になる。

 2. Architectural Managementにおいて管理対象となる都市を含まない建築物、建築物の内装、既存の空間の利用方法について、戦略的判断が用いられた場合のこと。


 先に定義を読んでも知らない用語が多くて腑に落ちない感じがするかもしれませんが、シリーズの最終回にはすっきり理解できてるのではないかなと思います。今はあまり気にしないで、「空間戦略の定義にはDesign Strategyに由来するものとArchitectural Managementに由来するものの二つがあるんだな。ふむふむ。」ぐらいに、気楽に考えていてくださいね!



01-3.なぜいま、空間戦略についてブログで書くの?


 昨今、私の周りではブランディングやプロジェクトマネジメントのような分野、いわゆる戦略や計画に基づいて提案されるデザインに興味を持つ学生が多い気がします。"気がします"というのは研究者としてはご法度のワードなので学校では絶対にこの言葉を口にしないのですが、ここはブログなので気に留めません。とにかく、戦略や計画に基づいて提案されるデザインに興味を持つ学生が多い気がするのです。


 そう感じるのは、学部の枠に捉われずに建築を領域横断的に学ぶ慶応義塾大学という環境(*本格的なメーケティングの授業と建築の授業を同時に履修したり、建築を勉強しながら卒業論文ではダンスを研究したり...カリキュラムの自由度では日本一!?)のせいかもしれませんし、建築家の職能が問われている時代を背景として建築以外の分野にも興味を広げておこうという学生が増加していることが影響しているのかもしれませんね。特にブランディングデザイン(水野学)などデザインを戦略や計画、経営の一部として教えるような講義を受けている学生が多いので、最近の学生に空間戦略についてお話しすると、すんなり理解してくれたり興味を持ってくれたりします。そこで、もっと多くの方々に私の研究について興味をもっていただけたらいいなと思って、空間戦略についてブログに書くことにしました。


 そんな私も"デザインストラテジー"に興味を持つ学生のうちの一人です。小さな設計事務所(いわゆるアトリエ系)で設計スタッフをしていたこともあって最終的な将来の夢は建築家になることですが、その中でも特にデザインストラテジーを空間に応用することのできる設計者、すなわち空間戦略家(Architectural Strategy)になることを目指しています。私は就職先が決まっていて、来年度から日建設計という比較的大きな組織設計事務所(人数や仕事の規模でいうと世界で一番大きいそうです)を拠点に建築のお仕事に携わらせていただくのですが、ここでも空間戦略の知見が活かせたらなと思っています。

(シリーズ内で少し触れたいと思いますが組織設計の業務の中で戦略の重要性は高まっていく一方で、本音を言うと「これが設計者の本業になってもおかしくない!!」とまで思っています。本当です。)



01-4.空間戦略って役に立つの?


 ちなみに、国内の組織設計事務所が社内で戦略を簡潔させることは稀で、必要に応じてコンサル会社やコンサル会社経由で広告代理店のクリエイティブディレクターに依頼をすることが少なくありません。場合によってはPM(Project Management)までも専門業者に外部委託することがあります。設計業務より時間的に先に来る業務や(例えば敷地探しや何をどのくらいの規模で建てるかなどの)与件整理のことをコンサル用語で"上流"と呼んだりします。一方で、スタディしたり図面を仕上げたり...といった、最終的なアウトプットに携わる設計者の業務のことを"下流"と呼びます。これは、どちらかが立場的に偉いというわけではなく、プロジェクトを進める時間軸(ウォーターフォール)を川の流れに例えたときに上流にあるか下流にあるかという話です。

 デザインの進め方として最もベーシックな"ウォーターフォール型"でググると下のような画像がたくさん出てくると思います。

ウォーターフォール型開発のイメージ

[fig.1]ウォーターフォール型開発のイメージ


 これは建築の設計に限らず車やスマートフォン、形のないソフトウェアやサービスのデザインにまで幅広く使われている図ですが、建築的に書き換えると下の図のような感じかもしれません。



ウォーターフォールの建築的なイメージ

[fig.2]ウォーターフォールの建築的なイメージ


もちろん、与件定義(スペックの議論)よりも上流の段階もあります。例えば、「プロジェクトにどれくらいの予算を使うか?内装と躯体の資金配分はどれくらいの比率にするか?」や。商業施設であれば、「空間にいくら使ってサービスの開発や施設内で接客にあたる社員教育にいくら投資するか?」といったことを考える資金配分です。資金配分はマネジメントとも呼ばれます。ドラッカーの理論(というか、野球部女子マネージャーが主人公の某解説書)で有名になった、あの"マネジメント"です。


 こういった上流から下流にかけてのプロジェクトの流れ、すなわち「ウォーターフォール」が円滑に進むように管理するのが戦略です。ウォーターフォールの一番最初に戦略があることで上流から下流にかけて一貫した判断基準を設けます。特にアウトプットがデザインされた具体的な製品や建物だと分かっている場合は、戦略のことをデザインストラテジー、一貫した判断基準を元に開発の過程を管理することをデザインマネジメントと呼んだりします。素晴らしい建築を実現するには優れた施工が必要で、優れた施工をするために優れた設計が必要で、そのためには敷地やビルディングタイプが適切に設定されている必要があって、その前にそもそも適切な資金分配がされていないとプロジェクトが頓挫してしまって...というように、プロジェクトにおいて上流がコケてしまうと下流がいくら頑張っても取り返せないというのがウォーターフォール型の特徴です。このように、空間戦略は設計プロジェクトの要でもあるのです。(学生街に高級なお店があったり、オフィス街に学生向けの廉価なお店があったり...敷地にふさわしくない建物が計画されていたりしたら、施工する大工さんが必死に頑張っても取り返せないですよね。)


 それで、プロジェクト全体を円滑に管理する戦略について、特に空間戦略について知っておくことでより上流から建築家のプロジェクトとして開始することができます。予想していたより文量が膨らんでしまったので、シリーズ初回はこれぐらいにして、続きは次回ブログに書きたいなと思います。



それじゃ、

またねっ!!

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